【ソウル澤田克己】日本統治下で朝鮮半島からサハリンに徴用された際の貯金返還を日本政府に求めている韓国人約2300人が23日、韓国政府が問題解決に取り組まないのは違憲だとして韓国憲法裁判所に提訴した。憲法裁は昨年8月、従軍慰安婦に関する同様の訴訟で政府の不作為を違憲と判断しており、今回も同様の判断がされた場合、両国間の新たな懸案となりそうだ。
原告側によると、サハリンの炭坑などで働いた朝鮮半島出身者の賃金は強制的に貯金させられた。日本人は敗戦後に引き揚げたが、約7万人の朝鮮半島出身者は帰国できず残留。郵便局が閉鎖されたため、引き出せなかった貯金の返還を求めている。
日本政府は、65年の日韓請求権協定で個人の請求権は消滅したと貯金返還を拒否。一方で原告側は、80年代末以降に帰国して韓国籍を取るまで旧ソ連国籍や無国籍だったため、協定の対象外だと主張している。
独立行政法人「郵便貯金・簡易生命保険管理機構」によると、貯金原簿は戦後の混乱で失われたが、サハリン・千島列島地域で約59万口座(約1億9000万円)が返金されていない。機構は「多くは日本人の口座と見られるが、朝鮮半島出身者の口座もあるはず」と話している。
日本政府は90年代以降、永住帰国する人のための団地をソウル郊外に建設するなどの支援を行ってきた。
毎日新聞 11月23日(金)20時26分配信