【ソウル=黒田勝弘】韓国は北朝鮮の“長距離弾道ミサイル発射成功”に表面的には平静さを保っているが、内心はかなりいらだっている。というのも、ロシアの支援を受けた韓国の大型ロケットは打ち上げ失敗を繰り返し、三度目の正直だった11月の打ち上げも直前に故障で延期になったままだからだ。
さらに兵器の弾道ミサイルは共同防衛体制を担う米国との協定で射程が800キロまでに制限され、北朝鮮に比べると“威力”は8分の1にすぎない。
北朝鮮の核開発に加えた執拗(しつよう)な長距離弾道ミサイル開発は韓国の対抗心理を確実に刺激しつつある。世論はロシアや米国に依存する現状に不満が募っており、国力に見合った独自開発を求める声が高まるのは避けられない。宇宙開発や軍備をめぐる南北の競争が激化しそうだ。
韓国の宇宙開発は、人工衛星はすでに数多く打ち上げられ実用化している。しかし、韓国の衛星としては最も重い1トン級の実用衛星を今年、日本のロケット(H2)で打ち上げたように、韓国独自のロケットによる打ち上げにはまだいたっていない。
そこでロシアと共同でロケット開発を進めてきたが、2009年8月、10年6月と2回の打ち上げに失敗。今年も10月から11月にかけ打ち上げを目指したが延期となった。現地からの中継で多くの国民が見守るなか、発射予定16分前に中止され世論の失望は大きかった。
一方、ミサイルの方は「米韓ミサイル指針」によって韓国軍のミサイルは射程300キロまでと大幅に制限されていたが、米国との話し合いの結果、今年10月、指針改定に合意。やっと射程800キロまで可能となった。
ただ、射程は短距離ミサイルの域を出ず、韓国からは中部以北で発射した場合のみ辛うじて北朝鮮全域が射程に入る。北朝鮮はすでに射程6千キロ以上の長距離ミサイルを開発中で、今回も3千キロ以上は飛んだものとみられている。
韓国の経済力(国内総生産・GDP)は北朝鮮の約40倍。にもかかわらずロケットやミサイル開発では北朝鮮に後れをとっていることになり、国民の欲求不満は強い。
産経新聞 12月13日(木)7時55分配信